沙弥の繰り言(234)

 カレンダーも残り少なくなり、この1年を振り返る時期を迎えたようです。
 まず思うのは、「今年も早かったな」という感想ではないでしょうか。
 新聞各紙も慌ただしく、今年の重大ニュースの発表準備をしていると思いますが、まだ大きな事件や事故が年内に起きるかもしれませんので、その見切り時が難しそうです。
 
 私も真似をして、と言って特別なことなど全くしていませんが、今年読んだ中で「これは役に立った」と思う「本」を取り上げ、ずうずうしく戌年を総括してみます。

 今年の7月(No230)「学校で教わった歴史は、尻切れだった」という話しをしましたが、実は「訳があってそうしたのではないか」と思っていました。
 と言うのは、実生活の中で教わり、目や耳にしてきた事柄 のいくつかが、特に戦中・戦後のことが「WGIPによって偏って知らされていたのだ」ということを「閉された言語空間 占領軍の検閲と戦後日本」(江藤淳著、文春文庫)で知ったからです。

 久しぶりに読み返し、引用させてもらいますと、このWGIP「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」(同書より)が行った例として、「『太平洋戦争史』(約一万五千語)と題する連載企画は、CI&Eが準備し、G-3(参謀第三部)の戦史官の校閲を経たものである。この企画の第一回は一九四五年十二月八日に掲載され、以後ほとんどあらゆる日本の日刊紙に連載された。この『太平洋戦争史』は、戦争をはじめた罪とこれまで日本人に知らされていなかった歴史の真相を強調するだけでなく、特に南京とマニラにおける日本軍の残虐行為を強調している」や、ラジオで「『真実はこうだ』〜これは『太平洋戦争史』を劇化したものであるが〜という番組が、一九四五年十二月九日から一九四六年二月十日まで、十週間にわたって週一回放送された」(同書)というのがあります。

 前書きが長くなってしまいましたが、取り上げたいのは今年8月に出版された「日本占領と『敗戦革命』の危機」(江崎道熬、PHP新書)です。

 占領政策はもちろん、罪悪感を植えつけるだけではありませんでした。
 たとえば、当時の食糧事情はきわめて劣悪だったと容易に想像できますが、GHQからの援助はどうだったのでしょうか。
 同書によれば、「占領初期の対日食糧援助はアメリカ政府の政策によって非常に厳しい制約が課せられていた」とあります。
 意図的に「食料よこせ」の騒動を起こさせた背景には、何があったと思いますか。

 この他にも、厳しいさまざまな占領政策が打ち出されますが、それらを「誰が実行したか。また、そのいくつかをどなたが阻止したのか」ということが詳しく書かれている本書は、いまも受け継がれている日本人に罪悪感を植え付ける活動の種が、占領政策で蒔かれていたということも知らせてくれます。  

 「誰が第二次世界大戦を起こしたのか フーバー大統領『裏切られた自由』を読み解く」(渡辺惣樹著、草思社)は、昨年11月(No222)に紹介した「本」ですが、今回取り上げた「本」と合わせて読まれると、相乗効果が数倍感じられると思います。
 なお、10月25日の新聞広告欄によると、「裏切られた自由」の上巻は8刷、下巻は5刷、「誰が第二次世界大戦を起こしたのか」が6刷とありました。

 資料に基づいて書かれた「戦中・戦後」史を読んでみたいと思う方には、これらはおすすめできると思います。
 何をするにも、まず知ることが役に立ちます。

 日本人が、必死になって生きた時代を改めて思い浮かべました。

 


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