天下統一のために、コンピュータという道具を使いこなし、次々と成果を生み出していくエンドユーザ織田信長の姿を著しています。
 信長がコンピュータを特別なものでなく、想いを実現するための道具の一つとして取り扱っていること、また、その道具を効率化のためだけでなく、天下の統一を早めるなどの効果を生み出し活用していく姿は、読者に様々な示唆を与えると思います。
 


 天正五年(一五七七年)の五月、建築や造船の才があるイタリア人宣教師オルガンチーノは、信長の話しに耳を傾けていた。

「織田家が実現しなければならない情報化の究極の姿というのは」
 宣教師を介して話の内容が外部に伝わることを意識し、信長はこれから実現しようとしている情報化の話を切り出した。

「いまの状態を、祖父信定が作り、父信秀が育て、わしが家督を継いだ頃の、小粒ながらきびきびしていた織田家の姿に戻すことだと思う。
 いまどうなっているのかが、いつ、どこにいても正しく把握でき、変わったことがあればただちに耳に入り、命令がすぐ行き渡る。
 そのような状態を、情報技術やネットワークなどの手段を活用し、範囲も深さも克服し、いまのように大きく複雑な世界で実現することが、たどり着く究極の情報化なのだと思う」

 オルガンチーノは、一語半句も聞き漏らさぬよう、身を乗り出した。

「そのような情報化を自分達だけが享受するのではなく、民のためにも作る必要がある。知りたいことを知らせ、情報を共有する。
 問い合わせや、困っていることをすばやく吸い上げ、役に立つことを教える。
 いや、逆に民から教わることもあるだろう。ドリルの話しは知っていよう」

「はい。フロイスから聞いております」 




 こんな話しからこの物語ははじまります。

 「まえがき」に、信長を登場させた物語を著した理由や、書いている事柄について触れていますので少し紹介させていただきます。


 「コンピュータという道具を、もっと使いこなせるようにできないか」と、全くお節介なことなのですが、あれこれ想いを巡らせておりました。
 そんなある時、「導入の決定権を持っておられる方が好きなことを前面に出しコンピュータを活用する話しをしていけば、取り組んでみようと思う方が増えるのではないか」「そうなれば、少しは課題が解消されるかもしれない」と思いつきました。

 そして、その好むことを、少々強引かもしれませんが、「時代小説」とし、よく知られている歴史上の人物、織田信長の生涯にコンピュータの導入から活用までを織り込み、コンピュータという道具の持つ大きな可能性とその限界、また場合によっては諸刃の剣になってしまう怖さを理解していただくことにしました。

 とは言え、小説を書き上げるほどの力は持ち合わせておりませんので、もどきということでゆるしていただきますが、全体の流れの中に、あるいは、随所にコンピュータという道具を活用し成果を出すには「こういうことが必要だ」「こう考え、こうすると良いのではないか」と思われることをできる限り組み込んでみました。
 
 組み込んだ活用のための提言を二つ三つ紹介すると、まず、コンピュータを導入する際に必要となる標準化の作業が出てきます。 
 標準化がどこまでできるかは、得られる成果を大きく左右しますので重要な準備です。
 この場面では、信長という登場人物の考え方や行動が参考になるかもしれません。

 それから、コンピュータという道具を活用することで実現できる情報化も、「計算・事務処理レベルの情報化」から「管理レベルの情報化」、そして、「戦略的なレベルの情報化」と三つのレベルを取り上げ、その経緯を追ってみました。

 これには、「処理が早くできるようになったというレベルの情報化で満足せず、付加価値をつけ、リピーターや新しいお客様を増やすというレベルの情報化にもっと挑戦してほしい」という想いを込めています。

 また、ユーザのための情報化教育に取り組む場面がありますが、ここで「ユーザに適した、身につけてほしい内容の研修をもっと普及させる必要がある」ということを強調したいため、信長に「ユーザの情報化教育は、ベンダーの情報化教育を基にして行うものではない」と言い切らせています。

 「情報化というのは、ユーザのため、それもエンドユーザが効率化を実現するために、あるいは、効果を生み出すためにあるのだ」
 「ベンダーや社内の情報担当部門のためのものでもない」という前提に立ち、「それでは、エンドユーザが情報化で成果を得るには、どういうことを知り、何を身につけたらよいのだろうか」という、いわばそのための解答例を描いてみたつもりです。

 一人よがりのところがあると思いますが、この答えを参考に展開されることで、新しい気づきが出てくるようならうれしいことです。

 セキュリティについてもページを割いてみました。
 「なぜ、ウイルスとかクラッキングなど、外からの悪さに神経を使わなければならないのだ」と不満を持っておられる方が多いと思います。
 私もその一人です。
 でも、何もしなければ被害を受ける可能性があります。
 これが取り替えることができない現実の世界なのです。

 一番の解決策はコンピュータの使用を止めてしまうことなのですが、利用することによって得る成果の方が多いと判断し使うなら、そのための対策を前向きに採らなければなりません。
 こんな考えの下で、「セキュリティとはどういうことなのか」「なぜ発生するのか」「対策をどのように考えたらよいのか」と話を展開しています。
 


 手前味噌になりますが、先にも触れたように、この物語は情報活動を「想いを実現するための手段の一つ」として扱っております。
  また、情報活動を俯瞰した状態で著していますので、皆さんがいま取り組んでおられる情報に関わることが全体のどこに位置づけられるのかということを、はっきりさせることができるのではないかと思っています。

 このような意味で、導入の決定権を持っておられる方だけでなく、支援活動や実務で情報に携わっておられる方、また、将来社会で活躍される学生の皆さんにも読んでいただきたい物語です。

 30×40文字のフォーマットで、表紙を含み150ページです。

ISBN978-4-9905703-0-9



  
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